東北地酒横丁
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2006.06.18(sat)

その3「家は南向き!?東向き!?それとも」

「家はどこを向く?」
イエの存在において、屋根がどう形づくられるかをイメージすることは重要だが、そもそも立地における「方位」はどうなっているのか。
 現在であれば100%南面だろう。実際、これがベストだとされている。果たしてほんとうに南向きが最良の配置なのだろうか。
 福島から北陸にかけては「東建ち(あずまだち)」と呼ばれる東向き民家が優勢である。また東北でも、岩手の中北部、津軽ほか青森地方などでも東向きの民家が意外と多い。南向きの利点として、家の一面が一日中日照を得られることが挙げられる。しかし農耕を中心とした生活において、日中家に滞在する家族構成員はどれほどいるのか。せいぜい体を悪くした老人であろう。家族皆が室内採光を気にするのは、実は朝夕に限られてくる可能性は否めない。
また雪国ではどうか。一年中建物の陰になる領域を「永久日陰」等と呼ぶが、実は南面民家と東面民家では、前者のほうが永久日陰の領域がひろい。要するに南向きでは雪が溶けにくいのである。
 これらの理由はあまり学術的に解明されていないが、事実、岩手県中北部地方の人が、西の奥羽山脈を背にしながら「朝夕明るい向きだ」と述べている、と聞くのは、これを裏付けるものと考えても大過はあるまい。
 また小生がとくに興味をもったのは「南東向き45度プラン」である。これだと永久日陰は皆無に近い。しかも南西向きでも日照には同じ効果が得られる。
実は、計画的かは別として、これを採用している地域がある。岩手県金ヶ崎町城内諏訪小路伝統的建造物分保存地区である。ここではL字に折れ曲がる街路に対し、南東向きや南西向きの武士住宅がゆったりと並ぶ。古来の太陽信仰からすれば、日の出の方角に敬意が示されたことは創造に難くない。それと実利的条件が重なって、こうした民家配置が生まれたとみることができよう。現在では古刹の方位感覚に関心が高まってきているが、中国的思想が輸入される以前は、都市や住宅の方位性は東西軸を基準としていたという説がある。逆にだからこそ、地形や水系にあわせた細やかな計画ができるわけだ。太陽と地面と水、そして人をつかって地域らしい住環境を再構築すること、これが地域計画に多大なる寄与を果たすはずと、今更ながら考えている。
大沼正寛


 
Profeel

◆大沼正寛氏
再生建築家・東北文化学園大学環境計画工学科

岩手県の各地に残る古民家で、伝統建築物の研究をすすめている大沼さん。
東北の風土と長い時間の中で磨き抜かれて来たこれらの技術や工夫、そして知恵を風化させず現代に再生しようという試みを、建築家の立場から興味深いお話で連載して行きます。

Current List
●その1「屋根のシルエット」
●その2「廂(ひさし)の下は縁むすび」
●特別編「茅屋根の可能性と現行制度」
●国際シンポジウム「日独住環境セミナー」のご案内(2005年5月)
●環境計画工学科 特別公開講座
住環境セミナー/北上川河口のヨシ原から宮城の建築風土を考える(2005年10月)

●同上レポート(2005年11月)
●その3「家は南向き!?東向き!?それとも」
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