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極低地登山隊(ごくていちとざんたい)。 極低地登山隊とは南極、北極、ヒマラヤ、チョモランマ、厳冬のアコンカグア、厳冬のマッキンリーとか、そういう極地とはいっさい関係のない、我々の身の回りにある、極くありふれた極めて難度の低い場所を徘徊、探検、登山してみようという主旨で始めた探検隊・登山隊のことを指す。だがしかし当面一人なので登山隊とは、とても言えない状態が続いた。 やがてこれが少しずつ人数を増やし東ケト会(とうけとかい)仙台支部という椎名誠氏率いる本家「東ケト会(東日本何でもケトばす会:の略称)」の最末端部の末席にかろうじてぶら下がる会になるのだった。 もちろん椎名氏より認証は受けたものの本家とはいっさい関わりないことをきつく約束させられた上でだった。 その猿はこっちを睨みつけていた。 睨みつけて、ふっと視線をはずし遠くを見る。 それが何分続いたのか、随分長い時間お互いにそこを動かなかった。 林道が通っているとはいえ、ここは人間よりも野生のほうが優先される場所。こうしたところで野生の生き物とばったり顔を合わせた時は、十分に気を付けるべきだ。こちらが侵入者なのである。 そこは谷あいのわずかばかり開けた明るい平地だった。この"明るい平地"というのが問題である。もう少し入れば大東岳登山口で、周りはブナを中心とした落葉広葉樹の大森林なのである。ブナをどかどかと伐り倒して、わずかばかりの下草の薮にひょろひょろの杉の苗木がまばらに生えた明るい平地のブナの大木の切り株の上にヤツは座っていた。 中年より、もうちょっと年寄りの雄猿に思えた。なぜオスなのか、おっぱいが垂れ下がっていないから?。猿学の専門家じゃないから分かるわけはないが、彼はオスの元ボス猿だったのだと、とにかく信じた。 猿と出くわした瞬間、ゾッとした。最初に感じたのは視線で、誰か見ていると思い、ふと顔をあげると大きな猿がこちらを見ている。 しばらく睨みあううちに、なんだか気持ちの奥が静かになってくる。不思議な気分だった。 彼の視線の呪縛からやっと逃れ、すたすたと山の奥の林道を登って行く。キノコを採りに行ったのか、何をしに行ったのかもう忘れてしまったが、帰り道に同じ場所を通りかかるともう猿はそこにいなかった。 ヤツの表情は何かに似ている、と思ったがそれが何なのか、誰なのか皆目見当もつかないまま月日が過ぎていった。 ある日テレビを見ていたら、颱風に襲われたリンゴ園のニュースが流れた。 暴れるだけ暴れまくり、ズタズタになったリンゴ園の片隅で立ち尽くし、少し背中を丸めてタバコを吸っている老人の顔が映った。 似ていた。あの時の老猿の表情に。いや視線が。 by ワンコ ※当文章の無断転載や引用を禁止します。 |
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