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車で山形に行くため関山峠を目指していた。 もうすぐ作並温泉にさしかかるというすぐ手前の橋を通りかかったときである。 血相を変えたやつが橋の上の対抗車線歩道をまっすぐ突っ走ってきて、すれ違った。国道48号線の歩道だ。 確かに血相を変えていた。 「お、おまいさんとこの息子が今しがた表通りで車にはねられた!」とか。 「あんさんのヨメはんな、どっかの男とさっき家出てったでー!!」とか、何とか言われて 「すわっ!」、「くそっ!!」とばかり、框を蹴り、おっとり刀で南無三、すっ飛んで出た。という表情だった。 いずれにせよ相当な事件や事故があったに違いない。 なにしろ顔は赤く燃え立ち、引きつるところはみごとに青く引きつって、猛然と走り去ったのである。 「今の・・・・は・・・?」 「さ・・る・・か?」 「・・・猿・だ・な」 長い毛のコートを着ていた。 顔が赤かった。 2本足で全力疾走すると人間はだいたい前のめりになるが、 あの人は確かに前のめり。 というより4足疾走のようだった。 「顔を見たか…」 「あの顔は、ただごとじゃあ、ねぇぜ…」 「相当、血相を変えていた」 一瞬の光景が、というより一瞬の表情が忘れられない。 そうかぁ、猿にも一世一度の出陣というのがあるのか。 by ワンコ ※当文章の無断転載や引用を禁止します。 |
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