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明らかに道に迷った。林道で、である。 わずか1年も経たないのにこれほど林道が増えているとは思わなかった。 4台のオフロードバイクで走っていたが、曲がる場所をまちがえた。 そして道が消えていた。 見た通りに言えば、道はそこで終わり原生林に突き当たってしまったのである。工事車両がUターンできるほどの広場になっており、様々な資材が置きっぱなしになっていた。太い高圧電線でも巻いていたのか巨大なケーブル用ボビンもあった。さて、仕方がない。このあたりで昼飯にするか。 ケーブル用ボビンをテーブルにして、今回はちょっと贅沢をしよう。いつもならEPIガスクッカーで湯を沸かし、チキンラーメンかカップ麺とサンドイッチくらいのところを、この日はフランスパンにハム、ソーセージ、チーズ。本格的コーヒーも点てようじゃありませんかと、山の上でのグルメを気取ったのでございます。 食べている間から背後の山の上の方が何やらざわめいてきた。 ガサガサ、ガサガサガサ〜。 何だろうと思った、その時、一斉に猿が騒ぎだした。 騒ぐと言っても鳴き声、吠え声を出すのではなく、木々をおもいっきり揺さぶる。1頭、2頭、3頭、4、5、6、7、8…。 いったい何頭いるんだ。しかも大・中・小とりまぜ、オッパイにしゃぶりつく赤ん坊猿を抱えた雌猿もいる。 猿の大集団に包囲されてしまった。 そのうち1頭がひょろっとしたくぬぎの木のてっぺんまで登り、激しく木を揺すって、こちらを威嚇する。 どうも歓迎していないな、と残りのフランスパンを齧りながら皆で辺りを見回した。 「ひょっとして、歓迎してんでねぇがや。猿の谷にご招待されでさ。猿舞いを見ながら、猿酒を振る舞われだりしてな」と、最後のカマンベールチーズを食べながら、一人が言った。「あいづら、腹へってんでねーの」ともう一人。 そのひと言で、全員静かになってしまった。 とはいえ、食うものは全部食って、食後のコーヒーも楽しみ、帰途に着いた。 バイク4台、帰り道は心無しかエグゾーストノートが控えめになったような気もする。 ユンボやブルドーザーにヘルメットの山賊よりも、鉄馬に乗ったヘルメット姿の軟弱な山賊の方が相手しやすいと思われたのだろうか。 本気で猿どもにやられたら、ちょっと恐い。 今度どこかであの若頭風のいなせな猿殿に出会ったらちゃんと挨拶をして山を通らせていただこうと、心に誓った。 by ワンコ ※当文章の無断転載や引用を禁止します。 |
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