利酒師奥州屋さんのお話を連載します。
利酒とは酒の香り、味、出来を利きわけること。
蔵元に通い酒造りのお話を聞き、お酒の声を聞くこと。
お客様の御注文に合ったお酒を選ぶこと。
利酒師はキキ手であり、キキ耳をもっていなければなりません。
さまざまな「あんな料理、こんな料理。こんなお酒ないかしら」という
御注文にお答えする師の素晴らしい技をお披露目します。

〈1〉クリスマス料理に合う日本酒ってありますか。

 はじめまして、奥州屋です。
 今回より東北地酒横丁さんのホームページに
「酒師キキ手・キキ耳『こんな注文!有り?』」というコーナーで、
お酒について独断と偏見の名のもとに、
あれこれと書かせていただくことになりました。
よろしくお願い致します。
さて、早いもので今年も残り僅かですね。
もうすぐクリスマスです。
あまり私には、縁のない行事ですが・・・。

そんなことより、では第一回めのご注文
「クリスマス料理に合う日本酒ってありますか?」。

はい、ございますよ。さっそくいってみましょう。

 おなかもすいてきましたね。まずは食前酒からいただきますか。
食前酒は、岩手は‘あさ開き’さんの「RIZA(リザ)」です。
純米酒で低アルコールの発泡性のお酒です。
このタイプのお酒としては、甘さはひかえめですが、
ちゃんとお米のお酒だぞーって主張してます。
炭酸がいくぶんキツイなぁと思われるでしょうが、
このピリピリ感が食欲を旺盛にしてくれます。
ボトルの色がとてもきれいで、もし雪が降っていたら、
積もった雪の中でボトルを冷やして飲みたいですね。
真っ白い雪に濃い青のボトル、とても絵になりますよ。

 さて、お料理をいただきましょう。
はじめはグリーンサラダです。
フレンチドレッシングでいただきましょうか。
このサラダには、山形は天童の‘出羽桜’さんの「出羽燦々誕生記念」です。
お米はもちろん「出羽燦々」。酵母は「山形清々」(山形酵母)。
麹菌は「オリーゼ山形」。オール山形産の1本です。
吟醸香ほどよく、やわらかい口あたりが、サラダとよく合うと思います。

 次は牡蠣のカクテルです。
これには宮城は塩釜の「於茂多加男山本醸造」です。
このお酒は特に目立つ派手さはありませんが、
なんというかどっしり構えていて、懐の深い酒です。
牡蠣にかぎらず、これからの季節の鍋料理にもかなりの好合性ですよ。
ちなみに余談ですが、私が牡蠣に最も合うと思うお酒は
平成3年に飲んだこの蔵のカップ酒(本醸造)です。
口に含むと湿った麹の香りがして、
それがなんともいい感じで牡蠣の香りとも調和するんですね。
でも、思い出のなかのお酒なので今回はお出しすることはできませんね。
ごめんなさい。
またまた余談ですが、このカップ酒にかぎっていいますと、平成4年あたりから今の酒質にかわってきたような気がするのですが・・・、と思います。
話が脱線してすみません。

 さて、ここらでスープをいただきましょう。
 今夜のスープはカボチャでございます。
見た目にも温かいパンプキンイエローのスープです。
お酒は福島の「金寶(きんぽう)自然酒」がいいかと思います。
化学肥料を一切使っていないお米と、
阿武隈川系伏流水で醸した四段仕込みの純米原酒です。
うっすらと山吹色をしたとろりとした口あたりの甘みのあるお酒。
このスープには好相性です。

いよいよお料理も残り二品となりました。

 クリスマスといえば、ローストチキンです。
こんがりと焼けたいい香りがしますね。
ローストチキンには、青森の「喜久泉特別本醸造」です。
「田酒」の蔵の実力派本醸造です。
私は田酒よりもこちらのお酒のほうが好みです。
色はお酒本来のうっすらとした山吹色。
もしかして濾過していないのでは?・・・。
していたとしても極力抑えていると思います。
キレがあり、大胆な口あたりで、杉とか、木のような香りがして、
口の中のチキンの脂肪もサッパリと洗い流してくれます。
ちなみにこのお酒は、私が好きな本醸造のベスト3に入ります。

 さあ、そろそろお腹も一杯でしょうか。
 そう言わずに別腹のデザートでファイナルメニューといたしましょう。
クリスマスはやっぱりケーキも食べないと。
そんなわけでケーキは、ブッシュ・ド・ノエルです。
さてお酒ですが、やっぱりこれでしょうか。
宮城は‘勝山’さんの「たまご酒」です。
今夜は私がいつも家で楽しんでいる飲み方を紹介いたしましょう。
まずお鍋に「たまご酒」と牛乳を適宜入れて温めます。
沸騰したら火を止め、ティーカップに注ぎます。
それにティースプーンで、一、二杯のカルーアコーヒーリキュールを加え、
シナモンスティックで掻き回します。
シナモンが苦手な方はスプーンでどうぞ。
またコーヒーリキュールの代わりに、
カップに注ぐ寸前にインスタントコーヒーを少量加えてもOKですよ。
この「たまご酒」、けっこう甘みがありますので、
牛乳でお好みの甘さに調整してくださいね。
眠れない夜とか、寒い夜などに飲んでも、体や心を温めてくれますよ。
どうぞ、お試しあれ。

さあ、これで今夜のメニューは全て完了です。
いかがでしたでしょうか?
もちろん、今夜のお酒はほんの一例にすぎません。
みなさんなりのお酒を見つけて、お料理と合わせてみるのも、
また楽しいと思います。

 それでは、またのご注文をお待ちしております。

  奥州屋でした。

〈1〉クリスマス料理に合う日本酒ってありますか。

〈2〉いろいろなお酒があって、どんなお酒を飲んだらよいか、わかりません。

〈3〉ワンカップ片手に利酒師は行く

〈4〉こんな季節にスキッと飲む日本酒ってありますか?

(5) 暑気払いに手軽で楽しいお料理とお酒ってありますか。


奥州屋お江戸にのぼる
カップ酒探検!

その1 ―塩釜編―

その2 ―花のお江戸の夜はレモンハートで―


その3 ―ああ、波乱万丈のワンカップ探検! おっと地震だあっ― 最終編。


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