利酒師奥州屋さんのお話を連載します。
利酒とは酒の香り、味、出来を利きわけること。
蔵元に通い酒造りのお話を聞き、お酒の声を聞くこと。
お客様の御注文に合ったお酒を選ぶこと。
利酒師はキキ手であり、キキ耳をもっていなければなりません。
さまざまな「あんな料理、こんな料理。こんなお酒ないかしら」という
御注文にお答えする師の素晴らしい技をお披露目します。

〈2〉いろいろなお酒があって、
   どんなお酒を飲んだらよいか、わかりません
 お元気でしょうか。奥州屋です。
 1月も終わろうとしています。早いですね。
お正月はおいしいお酒を飲まれましたか。
私は例年よりいくぶん飲み足りないお正月でした。
新年の1回目は「いろいろなお酒があって、どんなお酒を飲んだらよいか、
わかりません」と言う質問をいただいておりますので、
入門編とでも言うか、私流にお話してみようと思います。
とはいっても、お酒の定義みたいなことを話そうとは思いませんが。

「初心者なら大吟醸や吟醸から」。


 今、これをご覧になっているあなたは、
おそらくお酒にかなり興味があるのではないでしょうか。
そのような方は、まずはご自分で本屋さんに行き、
たくさんある日本酒関係の本の中から定義のようなことを勉強して下さい。
ではさっそくですが、何から飲みましょうか。
初めはやはり大吟醸タイプのきれいなお酒がよいと思います。
例えば、山形の十四代中取り大吟醸のようなお酒です。
こういったお酒は初心者だけではなく、
日本酒がいまひとつ得意ではないという方、
あるいは日本酒を激しく誤解しておられる方にもおすすめです。
そういう私も昔は全くお酒が飲めなかったんですよ。
ここで、少し私の話をしてみましょう。

私も昔は飲めませんでした。

 昔、私は本当に一滴も飲めなかったんですね。
しかし、当時一緒に暮していた人が、いける口で、 とはいえ
酔うとまさに“ヨッパライ”というか、 にくめないというか
“カワイイ”人でした。
私もどちらかと言えばお酒に興味がなかったわけではないので、
傍らで見よう見まね、ちびちびとなめるように飲んでいました。

 平成2年2月のある日。
私にとって人生が変わるような出来事がおきました。
酒蔵見学です。
その時に振る舞われた「絞りたて」のお酒は今でも忘れることができません。
柄杓で汲んだお酒を利き猪口に注ぎ、それを口に運んだ時、
「これが日本酒かぁ〜!」っていうくらいにショックを受け、
同時に大感動でした。
私の場合は、絞りたてのお酒がきっかけとなって
日本酒に深く興味を持つようになり、
色々なお酒を試してみるうちにまあまあイケる口になったんですね。

しぼりたて原酒!の季節。

 私の話はこれくらいにして。
絞りたてのお酒といえば今が旬本番でしょうか。
ご家庭でも新鮮な味や香りを楽しめる季節です。
いろいろあって迷うところですが、
私は宮城県黒川郡富谷町の「鳳陽しぼりたて本醸造 原酒」や
岩手県一関市の「関山しぼりたて本醸造 原酒」が好きですね。
このタイプのお酒はアルコール度数が高いので
初心者の方はどうかと思われるでしょうが、
フレッシュな香りが何とも心地よく、
ついつい盃を重ねてしまうのではないでしょうか。
腰が立たなくならないように御注意下さい。

 さて、どんなお酒を飲んだらいいかってっていうお話でしたね。
思い付くままに書いていきます。

お酒の本当の味は。

 まず、世の中で言う人気の銘柄ばかり追わず、
自分の舌で本物のお酒を見つける。
信頼のおける酒販店や飲み屋さんを見つける。
そういうお店がすすめるお酒をひと通り試してみる。
 お酒の飲み方としては、
例えば「酒は冷やに限る」などという思い込みは
お酒の楽しみ方を狭くするんですね。
1種類のお酒でも『冷や』→『冷酒』→『燗』と
温度を変えていくことによって、味わいに変化があらわれて、
自分にあった飲み方をみつけることができるでしょう。
また、お酒も人と同じで出会ったばかりの時の印象だけで評価しないで
長く付き合ってください。
同じ蔵のお酒でも性格はいろいろなのです。
 それから食べ物と、楽しむ時の多少のルールを言えば、
香の高いタイプのお酒には風味、味の強い料理は合わせない。
熟成タイプ(例=古酒など)のお酒には
生の魚介類を使った料理は合わせない。
あるいは、数種類のお酒を飲む場合は、
香りのシンプルなタイプから複雑なタイプへ。
冷たくして味わうタイプのものから、常温で味わうタイプのものへ、
といったようなことを頭にいれて味わってみると
もっとおいしくなると思いますよ。
そして“楽しく飲む”。
これですね。
お酒の意見を交換できる仲間をつくると、より楽しいですよ。
私にも何人か仲間がいて、
時々一緒にお酒を飲みながら酒談義をかわしています。
あっ、仲間といえば私のお弟子さんの峯さんのご主人様、
前回のコラムの誤字を指摘していただきまして、ありがとうございました。
この場をお借りしまして、お礼申し上げます。
ありがとうございました。

私の普段着のお酒!

 最後に私がお酒について普段こだわっていることを書きます。
私にとって普段着のお酒は「純米酒」です。
純米酒にはお米の味はもちろんですが、
“蔵の味”というか、蔵の真の姿が見えるような気がするんです。
だから、はじめての土地へ行った時も
まずはその土地で飲まれている普通の純米酒は必ず飲んでみます。
大吟醸とか吟醸といったハレの酒は、
案外自分の住んでいる場所でも飲めることがありますから。
もうひとつ、
純米酒は食べ物にもかなり広い範囲で対応してくれるお酒だと思います。

 さてさて、長々と書いてきましたが結論を言うならば
「自分にあった飲み方で、とにかく気になったものは何でも試してみる。
日々是修業」でしょうか。
お答えになっていないと思いますが、今回はこれにて失礼いたします。
また、次回お会いいたしましょう。

 05年1月吉日 奥州屋
〈1〉クリスマス料理に合う日本酒ってありますか。

〈2〉いろいろなお酒があって、どんなお酒を飲んだらよいか、わかりません。

〈3〉ワンカップ片手に利酒師は行く

〈4〉こんな季節にスキッと飲む日本酒ってありますか?

(5) 暑気払いに手軽で楽しいお料理とお酒ってありますか。


奥州屋お江戸にのぼる
カップ酒探検!

その1 ―塩釜編―

その2 ―花のお江戸の夜はレモンハートで―


その3 ―ああ、波乱万丈のワンカップ探検! おっと地震だあっ― 最終編。


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